梅雨の晴れ間、空の青さが、
ことのほか嬉しい季節となりました。
皆様におかれましては、
お元気でお過ごしのことと存じます。
さて、いきなりですが、
本日お伝えしたい話題は、
「疱瘡神」について。
ホウソウシン? え? これって疫病神?
と思われた方、大当たりです。
読み方は、疱瘡神と書いて、かつてはいもがみと呼んだそうです。
疱瘡とは天然痘のことで、かつて日本には、
数度にわたって全国的な大流行をしたと伝えられています。
歴史として残っている古き時代のものとしては、
光明皇后が活躍された奈良時代のこと。
この時代は、藤原氏がだんだんと
権力を掌握していきつつある時でもあったのですが、
その当時の四人の実力者が一気に天然痘にかかり、
お亡くなりになってしまったということもあったのです。
私たちが歴史で習った、「鎮護国家」という思想で、
仏教崇拝から、あの奈良の大仏さんで有名な東大寺が建立され、
全国に、国分寺や国分尼寺が創られていった経緯には、
こうした感染症の拡大を少しでも防ごうという、
悲願があったものと思われます。
さて、この時期、病で倒れた藤原氏四兄弟の姉妹であり、
民間初の皇后となられたのが、光明皇后であったのですね。
光明皇后は、救貧施設の「悲田院」、医療施設の「施薬院」、
また聖武天皇の遺品を東大寺に寄進し「正倉院」を建立、
他にも、興福寺や法華寺、新薬師寺などを
創建、整備されたと伝えられている方です。
私はかつてそのうちの法華寺を訪れた時、
「浴室」(からふろ)と呼ばれる、
屋根のかかった小屋のような場所を見て、
「ふーん、そのことからお風呂ってあったんだなぁ」
と思っていたのですが、
後から調べてみると、
湯釜に薬草を入れて炊き、その蒸気を、
狭い小屋の中で蒸し風呂として(サウナですね)、
吸いこみ、浴びていたのだということを知りました。
こうして、深い祈りと共に、
薬草の蒸気風呂や衛生習慣など、
様々な策を講じながら、
病を克服されようとしていたのだなと思い、
あらためて胸がいっぱいになりました。
また、病を「敵」と捉えるのではなく、
私たちの前に現れてくれた、
ひとつの「神様」として、
畏れかしこみ、崇め奉るというその在り方そのものが、
実に日本的というか、すごいなぁと改めて感じるのです。
つまり、一見「敵」と思えてしまうものも、
抱き込み、包み込んでしまうという姿勢です。
それはあたかも、「千と千尋の神隠し」の中に出てくる、
「かおなし」のようなもので、
愛が枯渇している? 時は、凶暴であったとしても、
その存在を認められ、愛された時は、
おばあちゃんの隣で、おとなしくちょこんと座っていて、
もはやかつての面影なない存在となっています。
疫病さえも「神様」として包み込んでしまう、
古代人の知恵は、時を経た今でも、
さまざまなヒントや気づきを与えてくれることと思います。
それでは今月の雅楽の紹介です。
Youtubeを調べていたら、(社)日本雅楽協会様が
主催された、疫病退散と繁栄祈願を願った、
雅楽奉納がアップされておりました。
祈りを込めて楽人様と舞人が一つになって、
舞い、奏でる様子は胸が熱くなります。
越天楽から始まり、豊栄舞、蘭陵王、長慶子と、
たくさんの演目があって、雅楽ファンには嬉しい限り!
視ても良し、BGMでも良し、
雅楽の響きに乗せた祈りの波動を感じてくださいね。
どうぞ今月も、
佳き日々をお過ごしくださいませ。