皆様、こんにちは。お元気ですか。
過ごしやすい季節を迎えています。しばらくすると、梅雨時期に入るので、
今時期の爽やかな風と光をたくさん受けて、
何はなくとも嬉しい…そんな毎日が送れたらいいですね。
今月のあけのうた雅楽振興会では、久々の研修会として、
感染対策を考慮しながら、野外研修に出かけます。
場所は、宇治平等院や源氏物語の故郷をたどるのですが、
私自身まだ、訪れたことがない場所でもありますので、
実際に観るとどんな感覚になるのかなぁと思い、楽しみにしています。
また、源氏物語についてですが、枕草子同様、
日本が世界に誇る、女流文学の最高傑作のひとつであります。
何がすごいのかというと、ドキドキハラハラの物語性はさることながら、
今から1000年も前の昔に、女性が文字を書き、物語を綴っていたという事実が、
世界からすればありえない! ことだったのですね。
というのは、女性の権利や地位というのは、
西洋においては「奴隷以下」のような扱いで…というか、
人間とおもわれていなかった! という衝撃的な歴史があります。
ですので、そうした存在に文字を教えるどころか、
「もの」と同じ扱いで二束三文で売り渡されていた時代、というのも長くあったのです。
今から思えば、信じられないことですが…。
それに対して日本は古くから、男女は力を出し合い、支え合い、
共に協力し合う仲間として「対等」だと考えられていたのです。
その考え方のもとにあるのが、古事記や日本書紀に見られる、
伊弉諾・伊弉冉の国生み神話にさかのぼります。
二人が和合しながら共に力を合わせて国を創っていきます。
ですので、どちらがかけても片手落ち。ただ、力でいくと、
構造上、男性の方がつよいので、力の弱い女性は、
「手弱女ぶり」といって、女性らしい特質をいかしながら、
自らの役割を果たして、共に歩むという姿を貫いていったのです。
一方、男性は「ますらをぶり」といいます。
強くたくましく、女性を守る存在として働くことが出来る。
その力を生かして、食べ物をとって来たり、国護りをするということをしていました。
なんといっても、男性だけでは子孫を残すことも出来ないのです。
ましてや乳房も子宮もありません。
そうした機能を持つ女性を尊び、敬いながら、危険なところは自らが率先してやる、
そして女性は、暮らしを調えながら、赤ちゃんにおっぱいをあげ、
煮炊きをしたり、織物をしたりして、家族を守り、栄えさせていただのですね。
というわけでこの国は、神話の時代から、男女平等でした。
…というか、女性の方が強い存在として、また、神とも近い存在として、
大切にされていたのです。ですのでもともとが協力し合う関係として始まっているので、
「男女平等」とか「同権」といった言葉さえなかったのですね。
そうした言葉が生まれる背景には、長らく人間以下の扱いを受けていた、
西洋文明での、女性の悲しい歴史があってこその世界だったのです。
「和」の国の人々が得意とする考え方は、
同じ方向を向きながら、共に何かを創り出すということです。
一方、西洋文明が得意とするところは、
二極に分けて、その違いを明確することで、正確な何かを創り出すことです。
どちらがよいとか悪いという話ではありません。
そこに捉われてしまうこと自体が、二極に分ける考え方ともいえます。
今、必要なのは、それぞれの人が思う、語る、背景に思いを馳せ、
それを知り、理解しながら、新しい何かを生み出していく知恵ではないでしょうか。
ところで、日本がほこる伝統的玩具として、「折り紙」があります。
この折り紙は、両端、両辺を合わせることによって、
新しい形をつくって、何か意味のある「見立て」の世界を創っていく遊びです。
端と端を合わせていく行為は、さながら、二極を一極に統合する作業ともいえます。
私たち、ひのもとの人が得意とするところは、互いに違う性質を持つ両極を、
互いの良さを生かし合いながらも結び付け、結び合い、
そして新しい価値を創造していく(新しいかたちができていく)
ことになるのではないでしょうか。
むすびの国、やわらぎの国。
一つひとつの折り目を丹念にそろえながら、
日々を丁寧に紡いでいけたらいいですね。
それでは今月の雅楽です。
…といっても、今月は雅楽ではなく、
6月の大祓の時期でもございますので、
現代語意訳がついている「大祓」の奏上をお届けしたいと思います。
私自身毎朝、朝の掃除や運動、禊をした後に、
大祓祝詞を奏上してから、一日が始まるのですが、
唱えるたびに清々しく、禊がれた気持ちになります。
面白いのは、奏上前に行う柏手の音と、奏上後に行う柏手の音が、
明らかに違うことです。身の穢れが少し祓われているのかもしれません。
そんな大祓の意味を知った上でまた奏上すると、
よりイメージも膨らんでくると思いますので、
今月はこちらをご紹介させていただきますね。
それではどうぞお元気で。
健やかな時をお過ごしくださいませ。