皆様、こんにちは。
爽やかな秋の風が吹く10月となりました。
暑かった夏もやっと過ぎ去り、動きやすくなりましたね。
今年はどこか行かれる予定はありますか?
私の方は、時間を見つけては縄文に関わる場所に出かけ、
土色の遺構をみながらうっとりとしています(←オタク…笑)。
今月、当会では、毎年恒例の秋の集いがございます。
この研修会では、通常行っている舞楽の稽古ではなく、
野外研修を中心に行いながら、和の文化の学びを深めております。
今回の研修の一つとして、古墳時代のある遺跡跡に出かけるのですが、
やはり、知識だけでわかるのと、現地に行って、
五感全部を駆使してわかるのでは、雲泥の差があるのです。
体験することの楽しみを味わいつつ、文化的素養を身に着け、
考える力、感じる力を養いながら、和心を育んでいけたらと思っています。
それにしても、日本の古代史は本当に奥深く、
調べれば調べるほど謎が深まってくるものです。
興味さえあれば、まるで一人ひとりが、ミステリーハンターになったような、
面白さがあるのですね。
そしてそれが、今に続く私たちの歴史と、
地続きになって繋がっているところが凄いなぁと思う所以です。
通常の歴史軸では、前政権を倒して新政権となり、
新しい統治者(征服者)へと変わると、前政権にあったものの
痕跡を消したり、徹底的に破壊するなどして、
壊されてしまうことが多いのです。
あるいは、かなりゆがめられた形で残ってしまうことにより、
歴史=His(彼の)story(物語)として、勝者に都合のよい
歴史が伝えられていきます。
その意味ではもちろん日本も例外ではなく、
書物や歴史の改ざんがありましたが、それでも、
残された遺物や痕跡を、徹底弾圧するわけでもなく、
密やかに残されている・・・というか残している、ともいえるのです。
意識的に探してみると、あれ? なぜここにこの名前を持つ神社が・・・?
とか、なぜここにこのような痕跡が「詠み人知らず」のように、
残されているのだろう? とか、あるいは今も秘かに大切にされている、
等といった風習や慣習がたくさん出てきます。
また、御伽噺や伝承といった形で残されていることもあります。
この背景にはおそらく怨霊思想や、
ケガレを忌み嫌うという考え方があると思います。
そしてさらに奥深く考えていくと、
人もモノも場所も、すべて皆、そこには神性が宿る、
という考え方に行きつきます。
人は神、ものも神、土地も神。
すべての現れを為す根幹には、
神がおわしますことを、直覚的に知っていたからこそ、
畏れ敬うという心情をもって、
接していたのではないかと考えています。
実はこうした精神的態度は、
古く縄文の御代から培ってきたものであります。
おそらくはその時代には、内なる深奥を通して、
さまざまな存在物の気配や質感と、
コミュニケーションをとっていたからなのでしょう。
もっと直接的に言うならば、
木と話す、生き物と話す、石と話す・・・といった非常に微細な、
エネルギーの流れ(電磁波のゆらぎ)をキャッチしているからこその、
存在物コミュニケーションが成立していたからだと推察します。
こうした精神的感受性は、実は、現在に至るまで、
精度は落ちているものの、継承されてはおります。
たとえば、付喪神(九十九神…ものに神様が宿るものの神)、
といった考え方や、朝日や夕日を見ると自然に拝みたくなる心、
場を立ち去る時にはお辞儀をしてから立ち去る、
いただきますやごちそうさまという食事の作法による、
生命への感謝と敬意・・・など、
こうして、慣習や風習といった伝統の継承によって、
1万年以上の時を経ても、ゆるやかに受け継がれているのではないかと考えています
太古から途切れることなく、グラデーションで繋がっている日本の歴史。
先人たちの想いを受け継いで、令和五年という今の時代を生きることが
出来ている私たち。
歴史は綴られ、継承され、千年後、二千年後の未来も、
よきものでありますように…。
今いる自己が、これからの先祖となることを想いつつ、
静かな喜びと共に悔いのないように生ききりたいものですね。
それでは今月の雅楽です。
毎年明治神宮で御奉納されております、
宮内庁式部職楽部様による2018年の舞楽―地久を、
ご紹介させていただきます。
この動画は、全体のうち、舞のある部分の抜粋ということですが、
秋の日の爽やかな風や、晴れやかな明治神宮様の気配も、
一緒に感じることが出来る素晴らしい舞楽ですね。
1200年以上の歴史を持つ雅楽は、当時の音色そのままに、
現代へと受け継がれ、その悠久の響きによって、
人々の心を癒し、大調和への調べと奏でています。
どうぞ、時には、このゆったりとした音楽をBGMに、
過去と今、そして未来に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
今月もお読み下さりありがとうございました。
どうぞお元気でお過ごしくださいませ。