皆様、こんにちは。お元気ですか?
ほほに当たる風が柔らかくなり、
春の気配が漂ってきました。
外では菜の花が咲いています。
暮らしの風景に彩りが加わることで、
なんとも嬉しい心地がするものですね。
さて、今日は、少し面白いアプローチからのお話をさせていただければと思います。
それは「日本耳」。
にほんみみ?? 聞きなれない言葉ですが、
日本耳とは、耳からイメージを呼び起こされる力が、
欧米人とは異なるというもの。
精神科医の名越博士は、「日本人と欧米人は情報処理の仕方に違いがあり、
日本人は音を前納的に捉え、
音からビジュアルを創造したり、感情をつかんだり、
その場の状況を判断する力に長けているのだということ。
たとえば、ドアの開け方一つで、誰が入ってきているのかを察したり、
あるいは挨拶一つの声色で体調を聞き分けたりと、
私たちが日常行っている耳からの情報と、そこから「察する」能力が、
どうやら実に高かった、ということなのです。
さらに嬉しいことには、この能力は、
加齢にともなって下がるのではなく、
むしろ上がることもあるのだとか。
(うんうん、想像つきますね…笑)。
また、実際にはない音を、オノマトペ(擬音語・擬態語)によって、
表現することも出来る能力があるといわれています。
たとえば、沈黙の音…シーンとか、シンシンといったオノマトペは、
この表現をきくだけで、情景が浮かんできませんか?
このような沈黙を表現する言葉があるということ自体、
私たちの感性的特質が現れていると思います。
もっとも、沈黙の音の正体は…?
というと、自分自身の内側で聞こえている音―心臓の鼓動や血管が流れる音などを、
心で聞いて感じているからではないかといわれています。
いやぁ…実に繊細な「いい耳」を私たちはいただいていたのですね。
もとはといえば、日本の風土―豊かな森と海に囲まれて
数万年に渡り暮らしてきた長い歴史が生み出した産物ではないかと考えます。
私たちは自然によりそい、その中にあって、
耳を澄ませ、心を澄ませ、自然と共に生きてきたのです。
それが私たちの耳の良さ! にもつながっていたなんて、
私たちの血の中にあるご先祖様に感謝したくなりますね。
というわけで、今月の雅楽をご紹介します。
遠き時代から奏でられてきた音色が、
変わることなく千年以上の時を経ても、
同じ音色で聞くことが出来るのですね。
それだけでも、うるっときてしまいます。
変わりたくないものを変わらぬままに残していく心と尽力。
私たちも大切なものを次世代へと繋いでいけるよう、
耳を澄ませて、心を澄ませて、進んでいきたいものですね。
舞楽 「春庭花」
この曲を管弦で奏するときは「春庭楽」と呼びますが、
舞楽になると「春庭花」となります。
四人の舞人が、中心に向かって広がったり狭くなったりするさまは、
まさしくお花の開花を表しているようにも見え、
なんとも雅で麗しく見えますね。
また、舞人の頭上には可憐なお花がそっと挿されているのも素敵です。
こうした「見立て」の文化を芸術の域まで高めていくこの国の粋。
それを全身で感じ取れる人でありたいと願っております。
というわけで、今月はこの辺で。
皆様、どうぞお元気でお過ごしくださいませ。